第44章 決戦のアッチェーソ【呪術廻戦0】
『アイツの性格を考えたら、棘とパンダが殺されることはない。それよりも、憂太と真希の方がヤバい。僕の想像が正しければ、二人は確実に殺される』
そして、星也はそう推測するに足る根拠を提示された。
「……なるほど。事情は分かりました。ですが、僕も今 特級二体の相手ですぐに動けません。移動も含めると、三十分はかかります」
『十分で戻ってこい』
「あの、僕が京都にいるって忘れてます? せめて二十分はください』
『十五分。これ以上は待てない。さっさと片づけろ』
相変わらずめちゃくちゃだ。だが……後輩の命がかかっている。無茶を言いたくなる気持ちも分からなくはない。
わざわざ京都にいる自分に声をかけるということは、五条も動けないのだろう。
「分かりました、十分でやってみます。でも、一〜二分の遅れは大目に見てください」
頼んだ、と言い残して、すぐに電話が切れた。
「はぁ……じゃあ、時間もないし、少し乱暴にするよ」
星也は【天枢】を上空に投げ、パンパンと柏手を打つ。
「【高天原より来たりし天若日子(あめのわかひこ)に畏み畏み白(もう)す。天津神々より下賜されし、邪心を射抜く神弓(しんきゅう)、神矢(かんや)を貸し与え、我に悪神百鬼(あくじんひゃっき)を討たせ給え】」
かつて、天孫降臨に際して天若日子が授かった弓矢の神器――天之麻迦古弓(あめのまかこゆみ)と天羽々矢(あめのはばや)。
葦原中国(あしはらのなかつくに)を平定する任務を疎かにし、色恋にうつつを抜かした持ち主を射貫いた神器だ。
落下する【天枢】が長弓――天之麻迦古弓に姿を変える。それをパシッと掴み、天羽々矢を番え、星也は上空へ向けて矢を放った。
光を放つ矢が雨のように京都の街へ降り注いだ。その矢は正確に呪霊のみを射抜き、あちこちで黒い火花が爆ぜる。