第44章 決戦のアッチェーソ【呪術廻戦0】
「星也さん、囲まれたわ!」
真依の言う通り、手つかずの一級呪霊五体が星也を囲んでいた。援護しようと加茂や真依たちが武器を構えるが、「大丈夫だ!」と少し声を張って止め、【白虎】から降りる。
「【普(あまね)く金剛諸尊に帰命し奉る】」
真言を唱える星也の隙をついて呪霊が攻撃してくるが、【白虎】と【青龍】が守ってくれていた。
「【猛威なる大忿怒尊(だいふんぬそん)よ。悪神百鬼を焼き尽くし、一切障礙(しょうげ)を催破する、激しき猛火を遣わせ給え】」
邪悪なるものを焼き滅ぼす不動明王の炎が呪霊を呑み込み、一級呪霊が一気に消滅する。
「あとはお前たちだな」
星也は【天枢】の切先を残りの二体の特級へ向けた。そこへ、スマートフォンが着信を告げる。
誰だ、こんな状況で。
タイミングが悪いとかいう問題じゃないのだが。
【白虎】と【青龍】に牽制を任せ、星也は電話に出る。
「なんですか、五条先生」
『星也、すぐにこっちに戻ってこい』
「は? 何を言ってるのか分からないんですが』
五条も戦闘中なのか、金属のこすれる音が微かに聞こえていた。
『新宿に傑がいない。たぶん、アイツは高専にいる。棘とパンダを送ったが、足止めも厳しいだろ』
「なんで二人を送ったんです。もしも殺されたら……」
夏油は特級だ。それに、新宿と京都に送った呪霊が全てとは限らない。おそらく、まだ持っているだろう。
それでなくとも、彼は体術の腕も立つ。五条の言う通り、学生二人がかかっても制圧はできないだろう。