第44章 決戦のアッチェーソ【呪術廻戦0】
――東京 新宿
ジリジリと開戦を待つ無数の呪霊と睨み合いながら、五条はある一点を見ていた。
「一人、面倒くさそうなヤツがいるな」
サングラスをかけた褐色の肌の異人を見ながら、どうしたものかと腕を組む。
だが、呪霊の方は準一級以上……中には特級も数体 混ざっているが、全体で見ると二級以下の低級がほとんどを占めている。ここは夜蛾の予想通りだ。
伏黒や詞織も連れてきて正解。いい経験になるだろう。
後方には【反転術式】を使える家入が控え、戦場にも同じく反転を使える星良がいる。負傷した場合、動ける者は家入のところへ、動けない重傷者は星良が治療する。
しかし、一つ気になることがあった。夏油の姿がないのだ。
あの目立ちたがりが前線にいない……京都に行ったのか?
京都には星也がいる。
夏油がそちらにいるのなら連絡があるだろう。
そこへ、「五条さん!」と血相を変えて伊地知がやって来た。
「報告が……どうされました?」
首を捻って唸る五条に伊地知が尋ねてくる。それに「なんでもない」と返し、話を促した。
「こんなときにとは思いますが……早い方がいいかと。以前 調査を依頼された乙骨君の件です」
伊地知の報告内容を聞いて、五条は顔をこわばらせた。
「日下部さん!」
すぐに日下部を呼び、伊地知から聞いた情報を伝える。
「はぁ……そういうことか……」
「憂太と真希が危ない。棘とパンダ、借りるよ」
本当なら日下部への説明を省いて直接 二人のところへ行きたいところだが、担任へお伺いを立てずにやるのはマズいという常識は待ち合わせている。
もし自分が何も聞かされずに星也たちが死地へ駆り出されたら怒る程度ではすまないだろう。