第44章 決戦のアッチェーソ【呪術廻戦0】
「あたしは性格悪ぃかんな。大物術師として出戻って、家の連中に吠え面かかせてやるんだ」
そう言って、彼女は得意げに口角を上げてニッと歯を見せた。
「そんで、内から禪院家をブッ潰してやる……ンだよ?」
俯いて顔を覆う乙骨に、真希が怪訝な表情をする。
「いや……真希さんらしいと思って」
つい笑ってしまった。
すごいな、彼女は。
どんな苦境の中でも、目標を見失うことなく戦いの渦中へと身を投じることができる。己の武器を磨き、誰かを守るために戦うことができる。
「僕、真希さんみたいになりたい」
強く、まっすぐ生きたい。ブレることなく、揺らぐことなく進んでいきたい。
「僕に手伝えることがあったら何でも言ってよ。禪院家 ぶっ壊そー! なんて」
「バーカ。一人でやるから意味があんだよ」
おどけたように笑うと、真希が顰めっ面をした。
「部屋戻るわ」
教室を出て行く真希に「またね」と声をかける。
また、強くなりたい理由ができた。
皆に置いていかれないように。
何かあったとき、皆の力になれるように。
自分のためだけじゃない。
もっと、もっと強くなりたい。
指輪を見つめ、乙骨はギュッと握りしめた。
* * *