第5章 アレグレットに加速する心【自分のために】
「次にいつ会えるか分からないから、少しでも一緒にいたいんだ」
話が見えない虎杖が首を傾げているのに気づき、星良が彼を呼びかける。
「あなたも一緒に来たら? 見るだけでも勉強になるわよ」
そう誘う声を聞きつつ、伏黒は考えた。
一時間しか時間がとれない。それも、かなり無理をして捻出したものだろう。
星也は特級呪術師。
日本にたった五人しかいない呪術師の頂点。
彼らにしか扱えない案件も多く、五条も本来は教職についていていい存在ではない。
無理をさせてしまうのは分かっているが、それでも呪術を見てもらえるのはとても魅力的だ。
「メグ。メグもお願いしよう。一緒に強くなりたい」
詞織がスウェットの裾を引いてくる。
上目遣いで甘えた声を出してくる詞織に、伏黒は一瞬 言葉に詰まるも、心が決まった。
強くなりたい。
詞織を庇えるくらい。
詞織を守れるくらい。
目の前で、理不尽の前に倒れる善人を助けられるくらい。
「お願いします、星也さん」
頭を下げて頼む伏黒に、星也は「あぁ」と、微かに嬉しそうに微笑んだ。
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