第44章 決戦のアッチェーソ【呪術廻戦0】
「呪霊が“視える”ことだよ」
「あ、そっか」
確かに、それができなければ始まらない。当たり前すぎて、逆に失念していた。
「一般人でも、死に際とか特殊な状況で見えることもあるけどな、あたしはこのダセェ眼鏡がないと呪霊が視えねぇ」
一度 眼鏡を外し、乙骨に見せる。確かに、度は入っていないようで、レンズの向こう側はクリアに見えた。
呪力がない。真希の話ではゼロではないらしいが、一般人と変わらないらしい。
「じゃあ、真希さんが使ってる武器って……」
「呪具だよ。始めから呪力が篭ってる。オマエや日下部さんたちがやってるみたいに、自分の呪力を流してどうこうしてるわけじゃねぇ」
はぁ、と今度は盛大にため息を吐き、真希は乙骨から眼鏡を受け取ってかけなおした。
「おかげで家を出られたけどな! 飯は不味いし、部屋は狭ぇし、知らねぇおっさんがうろついてるし、本っ当 最悪だったわ‼︎」
――「苗字で呼ぶな」
初めて会ったときに言われたことだ。
――「オマエみてぇに、呪いの耐性があるわけじゃねぇんだよ」
一緒に行った任務で呪霊に囚われたとき、すぐに呪いの影響が出ていた。
――「呪力のことはあたしに聞くな」
刀を使った戦いにアドバイスをもらおうとして、彼女は不愉快そうに顔を顰めた。
全部、こういうことだったのか。
「真希さんは、どうして呪術師を続けるの?」
呪霊を視認することすらできない。きっと、夏油のように見下す連中もいるだろうし、実家だけでなく、周りの風当たりも強いはずだ。
それなのに、なぜ自ら茨の道を進むのか。