第44章 決戦のアッチェーソ【呪術廻戦0】
「なーんか、とんでもないことになっちゃったな……」
夏油が高専に来てからずっと慌ただしく、授業もずっと自習続きだった。
ただぼんやりと無意に時間をやり過ごしていると、時計の針はのんびり進んでいき、陽もじわじわと傾いていく。
もう間もなく日没に差しかかってきているだろう。
巻き込まれているのは自分なのに、こんなところにいていいのだろうか。
そこへ、真希が足で教室の扉を開けて入ってくる。
「何してんだよ、憂太。今週は休講だろ」
「いや……なんか、落ち着かなくて……寮の人たちもいないし」
二年生は今回の件以前から京都に遠征中。狗巻とパンダは三年と新宿のバックアップ。星良は七海や灰原と新宿の防衛に参加、星也は京都に切り札として応援に行った。
そう話してくれる真希に、憂太は「そっかぁ」と相槌を打つ。
――禪院家の落ちこぼれ。
そう彼女が冷ややかな声音で夏油に言われていたことを思い出した。それに、防衛戦にも参加せず、乙骨とこうして待機している。
真希の等級は四級。だが、何度か一緒に任務へ行ったが、四級よりもっと強いはず。それなのに、どうして……いや、言いたくないはずだ。きっと、聞かない方が……。
「聞けよ。気になってんだろ。なんで あたしが落ちこぼれか」
顔に出ていたのだろうか。申し訳なくて俯くも、取り繕うのも返って怒らせてしまいそうで、「はい……」としどろもどろに先を促す。
「ウチ……禪院家はな、御三家って呼ばれるエリート呪術師の家系なんだよ。オマエ、呪術師に必要な最低限の素質って分かるか?」
「えっ? 何かなぁ……」
生得術式? いや、術式を持たない術師もいる。確か、日下部は術式を持っていないと聞いた。他には……。
うーん、と首を捻る乙骨に、真希は小さく息を吐く。