第44章 決戦のアッチェーソ【呪術廻戦0】
――十二月二十四日 百鬼夜行 当日
「総力戦だ! 今度こそ、夏油という【呪い】を完全に祓―う‼ ……とか、息巻いてんだろうな。あの脳筋学長」
夏油はゆったりとした足取りで高専の敷地内を歩きながら、時折り襲ってくる高専の見張りたちを殺し、先を進んでいた。
お互い本気で殺り合ったら、こちらの勝率は三割といったところだろう。呪術連まで出てきたら、二割にも満たない。
だが、そのなけなしの勝率を九割九分まで引き上げる手段が一つだけある。
――乙骨 憂太。
彼を殺し、特級過呪怨霊【折本 里香】を手に入れることだ。
彼らは学生時代の嘘をまだ信じている。
主従制約があろうとなかろうと、首を自分とすげ替えてしまえば、呪霊はいくらでも取り込める。
あの【星漿体】護衛のとき、主従制約があったために、伏黒 甚爾が連れていた格納型呪霊を取り込めなかった。
だが、その甚爾が死んだことで、呪霊を取り込むことができた。
勝率が高いことは向こうも分かっている。乙骨を戦場に出してくることはないだろう。下手を打てば、敵も味方も全滅だ。
百鬼夜行の真の目的は、乙骨を孤立無援の状態にすること。
「さぁ――新時代の幕開けだ」
夏油はそうほくそ笑んで、呪術高専の門を潜った。
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