第44章 決戦のアッチェーソ【呪術廻戦0】
「夏油 傑――術式【呪霊操術】を持つ特級呪詛師です」
星也は、準一級以上の術師が集められた、会議に参加していた。大きなパネルに資料を貼り、伊地知が説明を続ける。
「主従制約のない自然発生した呪霊など取り込みます。設立した宗教団体を呼び水に、信者から【呪い】を集めていたようです」
元々 所持していた呪霊もあるはず。数二〇〇〇というのもハッタリではないかもしれない。
そう説明する伊地知に、夜蛾が腕を組んだ。
「だとしても、統計的にそのほとんどが二級以下の雑魚。術師だってどんなに多く見積もっても五〇かそこらだろ」
「そこが逆に怖いところですね。アイツが素直に負け戦を仕掛けるとは思えない」
五条の言葉に、星也も内心で頷く。夏油 傑は決して愚かではない。頭も回る。
数二〇〇〇というのもハッタリではないだろうが、正しくない可能性もある。あまり楽観視はできない。
「はい! 星也くんか星良ちゃんの術式で探せないんですか? 奇襲を仕掛けて一網打尽にできれば解決すると思うんですけど」
「それは対策済みでしょう。【陰陽術式】とそれに派生した術式の汎用性の高さは彼も知っているはず。私が夏油さんなら、五条さんより先に手を打ちます」
灰原と七海の会話に、五条が「だろうね」と小さく笑う。
「確かに、五条の【無下限呪術】は強力だが、手数の多さは【陰陽術式】に軍配が上がるってわけね」
「そういうこと。こればっかりは敵わないからね、僕も」
日下部が気怠そうにキャンディ―を舐め、五条本人は肩を竦めた。
「一応 占はしてみましたが、居場所は掴めませんでした」
「あたしもやったけど、結果は同じでした」
星也に星良も『夏油 傑』と書かれた呪符を見せる。
行方をくらませてすぐは捜索範囲外といった手応えだったが、今回の占は術を阻害されているような手応えだった。
夜蛾が手を叩いて注目を集める。
「OB、OG、それから御三家。アイヌの呪術連にも協力を要請しろ」
――総力戦だ!
今度こそ、夏油という【呪い】を完全に祓う‼
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