第43章 それはとんでもないトロイメライ【呪術廻戦0】
乙骨が高専に編入してから半年以上が過ぎた。
真希や狗巻、パンダたちと過ごし、任務に行って、何度も助けてもらって……。
ここへ来る前は死ぬことばかり考えていたけれど、今では五条に助けてもらったことを感謝している。
日下部も面倒だと言いながら刀の使い方を教えくれたし、彼にも任務で助けてもらった。あの太刀筋は惚れ惚れするほど力強く洗練されていて、憧れの人の一人だ。
星也も時おり様子を見に来てくれて、気にかけてくれているのだと分かった。
姉の星良にも【反転術式】で世話になったし、妹の詞織や同居しているという伏黒にも会わせてもらった。
気にかけてくれているのは、きっと詞織が自分と同じ特級被呪者だからなのだろう。
呪術高専に来たときはまだ夏も訪れていない暖かな気候の頃だったが、今はもう冬の寒さが身に身体が震える時期になった。
不意に足を止め、乙骨は彼方を見上げた。
「どーした、憂太?」
パンダの問いかけに「えーっと」と言葉を濁らせる。
「なんか、ちょっと嫌な感じが……」
「気のせいだ」
「気のせいだな」
「おかか」
真希、パンダ、狗巻が声を揃えて否定してきた。
「えぇ⁉︎ ちょっと、みんなぁ……」
「だって、憂太の呪力感知 超ザルじゃん」
先を行く同級生を追いかけると、パンダがひらひらと手を振る。
「まぁ、里香みたいなのが常に横にいりゃ、鈍くもなるわな」
「ツナ」
真希と狗巻が続いた。
そこへ、大きな羽音が耳に届いた。見上げれば、ペリカンに似た巨大な鳥がこちらへやって来る。
「珍しいな」
「憂太の勘が当たった」
「しゃけ」
バサバサッと羽音を響かせながら、鳥型の呪霊が乙骨たちの前に降り立った。その傍らには袈裟を着た僧侶も降り立つ。