第43章 それはとんでもないトロイメライ【呪術廻戦0】
「仏様ね……よく分かってるじゃないか。呪術も使えない猿共め」
「素が出ていますよ、夏油様」
先ほどの笑顔から一転、顔を歪ませ、嫌悪を露わにする夏油に女性が声をかけてくる。
ハッと我に返り、夏油は女性に笑みを作った。
「幹部が揃いました。ミーティングルームへ」
――呪詛師 菅田 真奈美
それを聞いて、夏油は自分に消臭剤を振りまく。
「……何をなさっているのですか?」
「除菌、消臭」
みんなに猿の臭いが移るといけない。
「嬉しいなぁ。いつぶりかな、全員集合は」
各々のやりたいことや夏油が頼み事をすることもあって、いつも誰かしら集まらないことがあったが、今日は全員が揃っている。
そうするように予定を調整させたのだが。
「そうだ。久しぶりにみんなで写真を撮ろう。一眼どこだっけ?」
独り言のようにぺらぺら喋っていると、「ここに」と真面目な顔で真奈美がどこからともなく一眼レフカメラを取り出す。
みんなと撮るより先に、夏油はカメラを受け取り、真奈美と一緒にポーズを決めて自撮りを始めた。
そこへ、ドカドカと大きな足音を立てながら、小柄な男が近づいてきた。
「夏油! 夏油を出せ!」
そして、夏油を見つけた男が「貴様ぁ!」と声を荒げる。
「これはこれは金森さん。そんなに慌ててどうしました?」
「とぼけるな! 早く儂の呪いを解け! オマエにいくら払ったと思っている⁉︎」
真奈美に「いくら?」と尋ねると、ざっと一億 飛んで五百万という答えが返ってきた。
しかし、ここ半年ほど寄付がないらしい。どうやら限界のようだ。
「何を……言って……」
夏油と真奈美のやり取りに、金森の呼吸が浅く細くなっていく。
夏油はおもむろに口を大きく開き、先ほど若い娘から回収した呪霊を呑み込んだ。不快感ごと飲み下し、口元を拭う。