第5章 アレグレットに加速する心【自分のために】
用事があるからと五条が立ち去った後ろ姿を見送ると、入れ替わるようにして二人の男女が現れた。それにいち早く気づいた詞織が弾けるような笑顔を見せる。
「兄さま! 姉さま!」
ピョンと飛び跳ねるようにして駆け出した少女に、伏黒は和やかな気持ちになった。
「ただいま、詞織」
優しい表情で妹を受け止めたのは神ノ原 星也。その隣には、姉の星良もいる。
「おかえりなさい」
ギュッと詞織を抱きしめた星也は、ゆっくりと妹を解放し、目線を合わせた。頬を撫で、安心したように微笑を見せる。
「ケガしたって聞いたけど……痕には残ってないね。よかった」
「当然でしょ。あたしが治したんだから」
腰に手を当てて胸を張る星良に、星也が「そうだね」と頷いた。
「あれ、星良さんと……誰? めちゃくちゃ似てる」
「双子なんだよ、あの二人」
そう言って、伏黒は二人へ挨拶に行く。その後ろを、虎杖もついて来た。
「お久しぶりです、星也さん」
「あぁ、久しぶり。元気そうで安心したよ。恵も、ケガは大丈夫?」
「はい。俺の傷も星良さんが治してくれたんで」
ありがとうございました、と言うと、星良はひらひらと笑って手を振る。
神ノ原 星也と星良。
二人も幼い頃からのつき合いで、一緒に暮らしていたこともあり、弟のように可愛がってもらっている。
よかった、と安堵の息を吐いた星也は、やがて視線を虎杖へ移す。