第5章 アレグレットに加速する心【自分のために】
「ま、同じ建物で同じ階! 困ったらいつでも会いに行けるんだし」
ムゥと納得いかないとでも言うように少し唇を尖らせる詞織。そんな表情も可愛い。
すると、虎杖が詞織の頭をあやすように撫でる。
「いいじゃん! いつでも遊びに来いって。歓迎するからさ!」
「行く」
行くな。虎杖の部屋に行くくらいなら、自分の部屋に来い。
反射的に、引き離すように詞織の肩を抱き寄せ、虎杖を睨みつける。
虎杖は伏黒の行動の意味が分からなかったらしく、クエスチョンマークを飛ばした。詞織も同じように戸惑った表情をしている。
そんな三人の様子を見ながら、五条は声を押し殺して笑っていた。
「まぁまぁ、仲良くしてよ!」
そうそう、と五条は続け、パンッと手を叩いて朗らかな笑顔を見せる。
「明日はお出かけだよ! 四人目の一年生を迎えに行きます」
あぁ、そうだ。まだ一年が増えるのか。
詞織と虎杖が目をパチクリさせる中、伏黒は気怠げな表情でため息を吐いた。
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