第42章 鮮明なリバーブ【呪術廻戦0】
「同じ武具で打ち合うって言っても、日下部や星也に教わるのと、タメ同士で切磋琢磨すんのは違……っ」
不自然に言葉を切り、パンダが何か衝撃を受けたように固まった。
「高菜?」
首を傾げる狗巻に答えることなく、「憂太ァ! ちょっと来い!」とまた一本真希に取られて倒された憂太をパンダは呼びつける。
「どうしたの、パンダくん」
「超大事な話だ。心して聞け」
この話の流れで何 聞くんだ?
すると、パンダは真剣な表情で声を潜めた。
「オマエ、巨乳派? 微乳派?」
え、何 聞いてんの?
突然 始まった猥談にドン引きする。
「悟と日下部はどっちだっけ?」
「やっぱデカい方が揉み甲斐が……」
「僕はどっちも〜! おっきくても小さくても楽しみ方があるんだよ」
パンダと同じくらい真面目な顔で答える大人が怖い。
「星也も大きい方が良かったりすんの? 星良もそこそこ……」
「姉さんをそういう風に見るのやめてください。怒りますよ」
胸倉を掴んで殴りたい気持ちを抑え、五条を睨んだ。
「ん? 星也は微乳派か?」
「胸のサイズを女性の好みの判断基準にしてないから、僕には答えられないよ」
「え〜、じゃあ何で判断してんのさぁ〜?」
ねぇねぇ、と揺さぶってくる五条に無言を貫く。
もともと、星也には結婚願望がない。自分は死ぬまで術師として戦うつもりで、己の幸せを罪とすら感じている。
それに――……。
耳の奥で「星也さん」と名前を呼ぶ津美紀の声が聞こえた。
あの日、笑顔一つすら彼女に返せなかった。
津美紀の想いに答えないまま、誰かを愛する気はない。
不動を貫く星也に「ふぅん」と相槌を打ち、パンダは本命である乙骨の肩にふさふさの腕を回した。