第42章 鮮明なリバーブ【呪術廻戦0】
津美紀が呪われてから半年が経った。
眠り続ける津美紀に解呪を試すことは諦め、情報収集に力を注ぐ日々。それなのに、驚くほど情報は集まらない。
正体不明、出自不明……こんなことがあるのか、頭を抱えたくなってくる。
それでも時間は止まらない。
任務も呪霊も次々とやって来る。
助けを求められて手を伸ばし、そして助けられなかった人がまた一人……一人と増えていく。
今回の呪霊祓除の被害も大きかった。
村は全て呪霊の術式に囚われ、全員が死の刻印を刻まれていた。その上、呪いはすでに成就済みで、呪霊を祓ったにも関わらず解けない。
村人一人一人に解呪を施すも間に合わず、ほんの十数名しか助けることができなかった。
分かっている……いちいち気に病んでもしかたがないということは。
報告も兼ねて呪術高専へ戻ってくると、五条とばったり出会した。
「星也、久しぶりだね。随分と辛気臭い顔してるじゃん」
「もともとこういう顔なので」
素っ気なく返して息を吐くと、五条はにんまりと笑う。
「そうだ。一年の様子、見ていかない? 憂太のことも気になるでしょ?」
「それは……」
気にならないと言えば嘘になるが、素直に「はい、そうですね」と頷くのも癪だ。
「どうせ、断っても無理やり引っ張って行くでしょ」
そう皮肉を返すのが精一杯だった。
「分かってんじゃん。そんじゃ、行こー!」
「ちょ……力 強っ! 自分で歩けます!」
力任せにグイグイと引っ張る五条からどうにか逃れつつ、星也はグラウンドに向かった。
グラウンドが近づくにつれ、カンカンッと軽やかな音が耳に届く。
「乙骨ー、もっと腰 落とせー。重心ブラすなー」
――呪術高専一年 担任 一級呪術師 日下部 篤也
気怠いげながらも的確なアドバイスを受けながら、憂太は竹刀で真希の長棒と打ち合っていた。その近くでは狗巻はパンダと組み手をしている。