第42章 鮮明なリバーブ【呪術廻戦0】
「ま、トライ&エラーってね。しばらく放っておいてくださいよ。ほら 帰るよ、星也」
「えぇ」
その場を後にしようとすると、障子の一つから声が掛けられる。
「……乙骨の秘匿死刑は“保留”だということを忘れるな」
その言葉に五条が足を止める。
「そうなれば、私が乙骨側につくことも忘れずに」
五条の後ろに続いて外へ出ると、高い青空が迎えてくれた。
「ったく、野暮な年寄り共め。あぁはなりたくないね。気をつけよ」
そう言いながら、五条がこちらを振り返る。彼はサングラスをずらすと、頭上にある空と同じ色の目をすがめた。
「ねぇ、星也。君も憂太の件は規定側かな?」
「どちらかというと、そうですね」
ふぅん……と気に食わなそうに五条がこちらをジロジロと見てくる。
「一応 確認だけどさ、星也は僕を裏切ったりしないよね?」
「…………」
しばらく見つめ合うと、星也は小さくため息を吐いた。
「悔しいですが、五条先生は恩人です。あなたが僕の味方で、詞織たちを守ってくれるのであれば、意に反することはしません」
どちらにせよ、五条を敵に回すことは、イコール破滅だ。経験も力の差も、きっと一生 埋めることはできない。
あの日――十一年前、五条と初めて会った日に決めた。
使えるものは何でも使う。
利用できるものは何でも利用する。
そして、差し出せるものは全て差し出す。
自分の力の有用性も、弱さも理解している。
だから……。
「よかった」
星也の五条がニッと口角を上げた。そして、サングラスを外し、目元に白い布を巻いていく。
「若人から青春を取り上げるなんて、許されていないんだよ。何人たりともね」
* * *