第42章 鮮明なリバーブ【呪術廻戦0】
「おかえり。頑張ったね」
のろのろと五条を見上げる視線が、星也で止まる。
「あなたは……?」
「神ノ原 星也。君と同じ特級術師だよ、乙骨 憂太くん」
膝を折り、真希や子どもの状態を確認した。深い傷はないが呪いの影響を受けている。
傷自体は現代医学で治せるが、呪いはそうもいかない。五条の指示なのは癪だが、まとめて治しておこう。
乙骨に横へ並べるように指示し、星也は印を結んだ。
「――【オン・コロコロ・センダリ・マトウギ・ソワカ】」
星也の呪力が三人を包み込み、傷を治し、瘴気を払っていく。
「君の傷は?」
尋ねると、「僕は大丈夫です」という答えが返ってきた。
「ありがとうございます、神ノ原さん」
「星也でいい。姉がいるんだ。妹もね」
そう言いながら、星也はヒトガタに子どもを家へ帰すよう命じ、【太裳】には真希を高専へ運ばせる。
乙骨へ視線を向ければ膝を抱えていた。
「何か、スッキリしない顔だね」
「……初めて、自分から里香ちゃんを呼びました」
「そっか。一歩 前進だね」
「前進……と言えるかどうか。【折本 里香】――一定の知能を有し、いくらか意思の疎通はできる様子でしたが」
乙骨の呼び出しに応じた。彼の命令なら聞くのか?
だが、ある程度の善悪の判断ができなければ、命令前に大惨事が起こる可能性も……。
「すみません……」
「あぁ、星也のことは気にしないでいいよ。まっじめぇが取り柄だけど、多少の融通は利くから」
どういう評価だ、それ。そんな風に思われていたのか。
「先生……僕、少し思い出したんです」
左手の薬指に嵌めた指輪を見つめ、乙骨が目を伏せる。