第42章 鮮明なリバーブ【呪術廻戦0】
「はぁ……もういいです。今さらですし。それより、さっさと会って、さっさと帰ります」
やがて、学校が見下せる場所へやって来て、不意に上から叩きつけられるほど強力な呪力を感じた。
近くにいない、数十メートル離れた場所でこの気迫。
「これが……」
ビリビリと空気を震わせる呪力に、隣に立つ五条がククッと笑っている。
「凄まじいね。これが特級過怨霊【折本 里香】の全容か。女は怖いね」
一個人への執着。そして、その個人を守るために顕現し、外敵から守ろうとする――【過呪怨霊】。
詩音は生得術式の危険性と、世界を呪うことで生まれる底なしの呪力から、特級に分類された。
【折本 里香】と同じ――……。
「これが、詩音と同じ? 冗談でしょ……」
詩音が特級に分類されたのは正当な判断だ。間違っていない。だが、同じというにはあまりにも……。
「レベルが違いすぎる……」
制御状態ならもちろん、仮に全ての制御を取り払った解放状態だったとしても……話にならない。
「……なるほど。秘匿死刑……妥当な判断だったと、今ならはっきり言えますよ」
「厳しいね、星也は」
「詩音とは違う。制御も何もない放し飼い状態。向かってくるもの全てを攻撃する。この先 誰を殺すか分かりませんよ」
校舎から一人の少年が出てくる。背中には少女、両手に幼い子どもを抱えている。高専では黒い制服を身につける者が多い中で、白い制服は珍しい。
背中に背負っているのは真希、両手の子どもは失踪した児童か。真希の実力なら難しくないはずだが……呪具でも手放したのか。
「おやおや、怪我をしているね。星也を連れてきて正解だったな」
「たまたまでしょ」
ため息を吐きながら五条の後を追う。やがて五条が【帳】を上げて小学校へ到着すると、校門の前で白い制服の少年が倒れていた。