第42章 鮮明なリバーブ【呪術廻戦0】
「いきなり特級――それだけ取り憑いている呪霊が強いというわけですか」
乙骨 憂太――その名前を指でなぞり、星也は微かに眉を寄せた。
結婚の約束をした幼なじみ――……それが、死んで特級呪霊になった。
あり得ないとは言わない。その呪霊【折本 里香】に素質があれば。
たとえば、詩音には素質があり、手段があった。
己の心臓を媒介に一門の親類縁者、門下生をことごとく呪い殺した。
さらに、劣悪な環境下に置かれ、愛する双子の妹と殺し合いを強要され――呪いを溜めやすい環境だったといえる。
どちらにせよ、上層部が嫌う案件だ。保守派はこぞって死刑を主張するところを、また五条に止められたのか。
「そゆこと。で、今この子、任務中なんだけど、会ってく?」
「別に。早く仕事が片づいたんで、今日は……」
「いいじゃん。これ、その任務内容」
紙で資料を寄越され、しぶしぶ受け取って目を通す。
「編入早々 任務って……」
小学校の児童失踪事件。すでに二人の児童が行方不明なのか。
「特級とはいえ、呪力操作も未熟。編入してすぐの新人でも……真希が一緒なのか。これならどうにかなりそうな内容ですね」
「そりゃあ、僕だってちゃんと考えて任務はふるよ。担任の日下部さんからは、出張の間 面倒を見るように頼まれてるからね」
「高専に入学した当日、準一級だった僕に特級案件持ってきたの、どこの誰でした?」
あの日のことは一生 忘れないだろう。本気で死ぬと思ったし、走馬灯も過った。
死ぬ思いをして戻ってきたら、自分を死地へ送り出した元凶は自動車で寝ているし。
「いやいや。あの程度で星也は死なないでしょ」
「死にかけたって言ってますよね」
「でも、死ななかった。それが君の実力だよ。死線を乗り越えてこそ、術師(ひと)は成長するんだ」
結果 死ななかったから良かったが、傍から聞いたら暴論だぞ。