第41章 青き春はドレンテにひび割れて【玉折】
「似合わねぇか?」
「おおよそ、教師という人種からかけ離れていると思いますけど」
そんなに? ちょっと傷つくんだけど。
「でも、どうして急に? 夏油さんのことと関係が?」
「……ない、とは言い切れねぇけどな」
――俺一人が強いだけじゃダメなら、自分と同じくらい強い術師を育てればいい。
呪術界の上層部は魔窟だ。保身馬鹿、世襲馬鹿、高慢馬鹿、ただの馬鹿……そんなヤツらばかりだ。
だから、このクソみたいな呪術界をリセットする――それが、五条の考えた世界の変え方。
「上の連中を皆殺しにするのは簡単だ。でも、それじゃ首がすげ替わるだけで変革は起きない」
そんなやり方じゃ誰もついて来ない。
だから、五条は教育の道を進むことにした。強く聡い仲間を育てるために。
「まずはオマエな」
「は?」
「オマエは僕に並ぶ術師になれる。それと、詞織もちょうだい。それから……」
――「……ニ〜三年もしたら、俺のガキが禪院家に売られる。好きにしろ」
……もう一人いたな。
黒い男――禪院 甚爾の言葉を思い出していると、星也が詞織を抱き上げて振り返った。
「でも、なんで一人称を変えるんです?」
「それは……」
――「前から思っていたんだが、一人称『俺』はやめた方がいい」
「……『僕』の方が、子どもに怖がられにくいだろ」
そう言うと、星也が一つ息を吐く。
「一人称を変えただけじゃ意味がないと思いますよ。もう少し柔らかい喋り方にされては?」
「……“そうだね”」
ニッと口角を上げ、五条は後ろから低い位置にある星也の頭を撫でた。
「強くなってよ――……僕に置いていかれないくらい」
これから思い描く未来を夢見て、五条は優しい笑みを浮かべたのだった。
* * *