第41章 青き春はドレンテにひび割れて【玉折】
「正直な気持ちを言わせてもらえば、あなたの言い分も一理あると感じている自分がいます」
それでも、と星也は続けた。
「あなたの踏み出す一歩は、ソレであってはいけなかった。もっと違う形で向き合うことも、逃げることだってできたはずです」
新宿の喧騒の中で、自分たちの周りだけが別世界のように感じられた。この世界には、三人しかいないのではないかと錯覚しそうだった。
そんな中で、まだ十歳足らずの少年は、子どもとは思えないほど高潔な志を語る。
「前にも言いました。僕にはここでやることがあります。守りたいものもある。だから あなたとは行けません。どんなに苦しくても、理不尽だと思っても……それでも僕は非術師を守ります」
――だって、僕は呪術師だから。
きっぱりと言い切る姿に、五条は無意識に安堵していた。
星也の返事に、夏油は困ったような笑みを浮かべる。
「残念だ。君を懐柔するなら、最初に声をかけるべきは星良ちゃんだったかな」
「姉さんに手を出すようなら、容赦はしませんよ。あなたの甘言に惑わされるとは思いませんが」
そうだろうね、と言って、夏油はこちらに背を向けた。