第41章 青き春はドレンテにひび割れて【玉折】
「もうそろそろいいかな。生き方は決めた。後は自分にできることを精一杯やるだけだ」
五条は反射的に、夏油の背中に結んだ掌印を向ける。攻撃の気配を感じたのか、彼は振り返ることなく口を開いた。
「殺したければ殺せ。それには意味がある」
それを最後に、夏油は雑踏の中へと消えて行く。
殺す。そのつもりで掌印を向けた。
けれど、未だ混乱する頭は、夏油を呪詛師と認識してくれなかった。
一緒になってバカ騒ぎした日々が、背中を預けて戦った日々が、目の前の現実を拒絶する。
「……追いますか?」
わざわざ聞くことじゃねぇだろ。
アイツは呪詛師になった。
今すぐ追いかけて息の根を止める必要がある。
オマエだって分かっているはずだ。
それでも――……。
「いや……もう、いい……」
掠れた声で呟き、五条は掌印を握りしめ、ゆっくりと腕を下ろした。
* * *