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夢幻泡影【呪術廻戦/伏黒 恵オチ】

第40章 正しさに混ざるノイズ【玉折】


「【星漿体】のことは気にしなくていい。あのとき、もう一人の【星漿体】がいたか、すでに新しい【星漿体】が生まれたのか。どちらにせよ、天元は安定しているよ」

 その言葉に軽く目を見開くも、夏油は「でしょうね」と短く返した。

 天元は『不死』の術式を持つが、『不老』ではない。だが、ただ老いるのではなく、一定以上の老化を終えると、術式が肉体を創り変えようとする。

 その結果がもたらすのは、より高次元の存在への進化。その段階に至ってしまえば、『意志』がなくなり、天元という『人格』が消える。

 さらに、天元は呪術界の基底ともいえる存在だ。高専各校 呪術界の拠点となる結界、多くの補助監督の結界術の全ては、天元によって強度を底上げしている。

 もしも天元の意志が消えれば、人々を守る理由もなくなり、最悪の場合──天元が人類の敵となる可能性もある。

 そのために、五〇〇年に一度 【星漿体】──天元と適合する人間と同化し、肉体情報を書き換えることで肉体を一新し、術式効果を振り出しに戻す――そのための、護衛任務だった。

 けれど、護衛が失敗に終わっても、天元に変調は見られない。ならば、九十九の言う通り、理子に代わる【星漿体】がいたと考えるのが自然だ。

 今度こそ去って行く九十九を見送り、夏油は血のように滲んでいく夕空を見上げた。

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