第40章 正しさに混ざるノイズ【玉折】
「どちら様ですか?」
警戒しながら尋ねると、隣で灰原が「はい!」と手を上げる。
「僕はたくさん食べる子が好きです!」
「灰原……」
躊躇いなく答える様子に呆れるも、彼はあっけらかんとしていた。
「大丈夫ですよ。悪い人じゃないです。人を見る目には自信があります!」
無邪気な笑み。
迷いがない、真っ直ぐな言葉。
それに、芯の通った志。
「……私の隣に座っておいてか?」
どうしようもなく眩しくて、一言 言わずにはいられなかった。
けれど、灰原は意味が分からなかったのか。首を傾げつつ「はい!」と頷く。
「君、今のは皮肉だよ」
彼女が楽しそうに肩を震わせて笑った。
やがて、七海が灰原を探しに来て、そのまま二人は去って行く。その後ろ姿を見送ると、彼女は夏油の隣に座った。
「後輩? 素直でカワイイじゃないか」
「術師としては、もっと人を疑うべきかと」
腕を組んで唸るように言うと、彼女は「で?」とこちらを見る。
「夏油くんは答えてくれないのかな?」
何を…と言いかけて、好きな女のタイプを聞かれたことを思い出した。
「まずはあなたが答えてくださいよ。どちら様?」
もう一度 同じ質問を繰り返すと、彼女の気迫が変わる。