第40章 正しさに混ざるノイズ【玉折】
長い激戦を終えたような気分だった。
いくつもの任務が連続して入った。高専に帰る間もなくあちこちへ駆け回り、何体も呪霊を取り込んでいく。
その疲労が蓄積し、久しぶりに高専に帰って来た夏油は、夕日が窓から差し込む自販機前の共有スペースで、ひたすらぼんやりとしていた。
「あ、夏油さん!」
呼ばれて顔を上げると、後輩の灰原 雄がビシッと居住まいを正し、「お疲れさまです!」と声を掛けてくる。
「灰原……何か飲むか?」
「えぇ⁉︎ 悪いですよ!」
謙虚な姿勢を見せつつも、「コーラで!」と注文してくる灰原に小さく笑う。笑ったのはどれくらいぶりだろうか。
澱のように溜まっていた靄が少しだけ晴れ、ようやく肩の力を抜けた気分だ。
注文通りにコーラを買ってやると、灰原が嬉しそうに「ありがとうございます!」と頭を下げてくる。コーラ一本に大袈裟だなと思うと、またおかしくなった。
夏油の隣に座り、灰原が「夏油さん、聞いてください!」と話す。
「明日の任務、結構 遠出なんですよ」
「そうか。お土産を頼むよ」
「了解です!」
甘いものとしょっぱいもののどちらがいいかと聞いてくる灰原に、甘いものを頼んだ。五条は辛いものより甘いものの方が好きだ。
五条とも、久しく会っていない。自分も彼も任務続きですれ違っている。
無理をしていなければいいと心配な反面、五条ならばどんな窮地も涼しい顔で切り抜けるのだろうと、頼もしいのと同時に微かな嫉妬を感じている。