第40章 正しさに混ざるノイズ【玉折】
「救えた人、救えなかった人……たくさんいます。でも、思ったんです。救えなかった人のことは忘れない。そして、その分 強くなって、それ以上に大勢の人を助ける」
相変わらず、自分を追い詰めてばかりだな、この子は。
「……五条さんくらい強くなれれば……どんな状況でも、どんな人でも助けられるんでしょうか……?」
「考えすぎだ。このままでは参ってしまうよ?」
術師は仕事柄、ある程度のイカレ具合が必要だ。それができなくて辞めていった術師は大勢いる。
だが、星也の思考は驚くほどマトモだ。一つ一つを正面から受け止めて心を痛めている。
苦笑しながら言うと、星也は「いえ」と首を小さく振った。
「僕にはやらなければいけないことがあります。守りたいものもある。そのためにも、術師を続けます。何があっても……辞めるつもりはありません」
これが、彼の決意か。
強い光を宿す星也の瞳が眩しくて、夏油は意識をして目を逸らした。
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