第39章 覚醒するモジュレーション【壊玉】
「ハッ……化物が」
相変わらず楽しそうに笑う声が聞こえ、甚爾は顔を引き攣らせた。
身体を起こし、自身の状態を確認する。骨折はしていない。
今の衝撃波のようなものが、【無下限呪術――術式反転 『赫』】。
①止める力――ニュートラルな【無下限呪術】
②引き寄せる力――強化した【無下限呪術『蒼』】
③弾く力――【術式反転『赫』】
全て、問題なし。
呪霊から取り出した長い鎖の呪具【万里ノ鎖】を【天逆鉾】に取りつける。
【万里ノ鎖】は一方の端を観測されなければ、際限なく伸び続ける。そして、その端は格納型呪霊に呑ませた状態だ。観測される心配もない。
『止める力』は元より、『引き寄せる力』はリーチを得た【天逆鉾】で掻き消すか自分の足で振り切れる。
『弾く力』はタイミングさえ外さなければ【天逆鉾】を盾に凌ぐことが可能。
ビュンビュンッと鎖で繋いだ【天逆鉾】を振り回し、未だ滞空中の五条を見上げる。その空色の瞳と目が合った。
自分がここにいるのだ。【星漿体】の暗殺に成功したことは分かっているはず。それなのに、【星漿体】を殺された怒りも、憎悪も感じられない。あるのは妙な優越感か、それとも高揚感か、万能感か。
なんだこの強烈な違和感は……。
「……いや、これでいい――殺す」
遠心力を得た【天逆鉾】を五条に向けて放つ。勢いよく放つ。素早く伸びた【天逆鉾】に、五条が口角を上げた。
「天上天下、唯我独尊」
そんな言葉が聞こえたが無視する。甚爾は自分が立つ足元を抉るようにして瓦礫を巻き上げた。砂塵と瓦礫で目眩しをして、その背後から【天逆鉾】を天高く伸ばす。
相手は空中。避けることはできない。【無下限呪術】で止めようとしても、【天逆鉾】の効果で貫ける。