第39章 覚醒するモジュレーション【壊玉】
「殺すなら対策が必要……けど、タダ働きはゴメンだな。なんかついでがあったら確実に仕留めて――……」
だらだらと歩きながら【盤星教】の敷地を出ようとして、甚爾は足を止めた。
「よぉ、久しぶり」
思わず息を呑み、目を瞠る。
白い髪、血塗れでズタボロの制服、そして空色の瞳――道を塞ぐようにして立っていたのは、間違いなく殺したはずの五条 悟だ。
「……マジか」
そんな言葉しか出てこない甚爾に、五条は声を上げて笑った。
「大マジ、元気ピンピンだよ」
そう言って、白い髪をかき上げて額を見せてくる。メスのような小さな刃で刺した傷が塞がっていた。
「【反転術式】……!」
「正っ解っ! オマエに喉 ぶち抜かれたとき、反撃は諦めて【反転術式】に全神経を注いだ! 言うは易し、今までできたことねぇよ。周りで唯一 できる奴は『ひゅー』とか『ひょい』とか何言ってるかさっぱりだし、星也の呪力はクセ強すぎて参考になんねぇしな! だが、死に際で掴んだ! 呪力の核心‼︎」
声高らかにぺらぺらと……まるで麻薬や覚醒剤でも飲んだかのように、テンションも異常に高く、目がイッている。
「オマエの敗因は俺の首をチョンパしなかったことと、頭をぶっ刺すのにあの呪具を使わなかったこと」
「敗因? 勝負はこれからだろ」
五条の言う“あの呪具”――【天逆鉾(あめのさかぼこ)】を呪霊の口から取り出す。
「あ――? そうか? そうだな。そうかもなぁ‼︎」
両手を広げて高笑いをする五条に、眉を寄せつつも、甚爾は勢いよく地面を蹴った。弾丸の如き速さで五条に迫り、【天逆鉾】で斬りつける。
それを紙のようにひらりと躱されるも、すぐに斬り返すが、そこに五条の姿はない。見上げれば、彼は宙へ逃れ、上下逆さの状態でこちらへ指先を向けていた。
――【術式反転『赫』】
――キュンッ、ドゴォッ‼︎
凄まじい勢いで放たれた衝撃波が甚爾を襲い、【盤星教】本部の屋根にヒビを入れる。どうにか身体を逸らして直撃は免れたが、まともに食らっていたら死んでいただろう。