第39章 覚醒するモジュレーション【壊玉】
「なんと、プライベートジェットは会長の私物だとよ」
「だとしても、だろ」
『遠くに連れて行け』と指示したのは確かに自分だが、それで沖縄って……確かに遠いが。
わざわざプライベートジェットまで出して連れて行くことはなかっただろうに。普通は車で地方に連れて行くだろ。
そう話すと、孔は「金持ちの考え方はスケールが違う」とまだ笑っていた。
ようやく本部の敷地からは出たが、【盤星教】自体は広大な森と小さな建物などなど――とにかく広すぎる。もはや小さな街一つ分くらいはありそうだ。
「その金持ちの金で飯 食おう。接待に使ってる店に連れて行けよ」
「嫌だよ。オマエ、男に奢んねぇじゃん」
当たり前だろ。男に金出すとか捨ててるのと変わらないではないか。
女は優しくしてやれば世話を焼いてくれるが、男にはそれがないし、男に世話を焼かれる趣味もない。
タダ飯にありつけると思ったのが、思惑が外れたな。
低く舌打ちをすると、孔はタバコの煙を吐き出しながら、フッと口角を上げた。
「オマエと関わるのはな、仕事か地獄でだけって決めてんだよ。じゃあな」
この後にも予定があるらしく、孔は片手を上げて去って行った。それを見送り、甚爾は何となく空を見上げる。
そういや、さっき殺した五条の【六眼】もこんな色だったな。
五条家に生まれた【六眼】の子どもを、面白半分で見に行ったことがある。後にも先にも、背後に立った自分が気取られたのは、このときだけだった。
だから、そのときの【六眼】の子ども――五条 悟が鈍くなるまで“削った”。
どの道 殺しておかなければ、いずれ何かの仕事で障害となったことだろう。経験を重ねればその分 障害として大きくなる。今のうちに殺せたのはよかったかもしれない。
次に警戒するなら、あの神ノ原のガキ共。今日 対峙して思ったが、【陰陽術式】はやはり厄介だ。
大して強くなかったが、姉の派生の術式もこちらの攻撃を防いできた――が、あの術式は書く手間があるから隙をつきやすいし、呪符や護符も手数で押し切れる。
……となると、問題は弟の【陰陽術式】。神ノ原の秘密主義のせいで情報が少ない。今日 いくつか見られたのはラッキーだった。