第39章 覚醒するモジュレーション【壊玉】
「もし天元が暴走すれば、立ち行かなくなるのは人間社会かもしれねぇぜ?」
孔がタバコを咥え、園田の背中に投げかけると、彼は足を止めて少し振り返る。
「星と共に堕ちるのならば、已(や)む無し」
そう短く答え、今度こそ園田は奥へと下がって行った。
なんだコイツ。頭 おかしいんじゃねぇか?
頭を示しながらクルクルと指を回してジェスチャーして見せると、孔も深く息を吐き出した。
「【盤星教】の強力って、沖縄の件か?」
「あぁ」
受け渡しも終わり、甚爾は孔と本部から外へ出る。
「何であんとき、メイドを殺さなかった。オレ、言ったよな? 『テキトーに遠くに連れてって殺せ』って」
場所まで指定はしなかったが、自分は孔に指示を出し、彼も了承した。孔とのつき合いは長い。指示を聞き流すことは今までなかった。
「あのときのオマエのプランが何となく理解できたからな。メイド救出失敗の緊張より、成功の緩みの方が“削り”としてデカイと判断した。つーか、仲介役をコキ使ってんじゃねぇよ」
ぼやきながら、孔はずっと咥えたままだったタバコに火をつける。
確かに、上位下達をブラしてこちらの狙いをボカす手段は今まで散々やってきた。だから、孔も察したのだろう。
結果オーライといえばその通りだ……が。
「だからって、何で沖縄なんだよ」
「それは俺も笑った。捕らえた人間を運ぶなら、普通 車を選ぶよな。公共交通機関はリスクが高いし」
思い出したのか。小さく笑いながら、孔は煙を吐き出した。
ま、やったのは素人だからな。五条たちも、余計に混乱したことだろう。