第39章 覚醒するモジュレーション【壊玉】
【盤星教 本部――星の子の家】
「ほらよ」
ゲロッと甚爾の武器庫とも言える格納型呪霊が一人の少女を吐き出す。無造作に吐き出され、少女の身体は力なく床に転がった。
「【星漿体】――天内 理子の遺体、五体フルセットだ」
「フム……確かに」
――【盤星教】代表役員 園田 茂
理子の遺体を確認し、園田は満足そうな笑みを浮かべる。
「金の受け渡しは手筈通りに。多少 色もつけよう」
園田の言葉に、【星漿体】の受け渡しに同席していた仲介役の孔 時雨は「マジか」と呟いた。
「さすが、教祖様。太っ腹だね」
「教祖じゃねぇよ」
あれ? そうだっけ?
首を傾げていると、孔が続ける。
「でも、いいのか? 必要経費とはいえ、かなり協力してもらったのに。むしろ、ごねられると思ったぜ」
「私たちはダメ元で君に暗殺を依頼した」
そう、園田は重々しく語った。
【盤星教】は奈良時代、天元が日本仏教の広がりと共に術師に対する道徳基盤を説いたのが始まりらしい。
呪術界と“宗教法人”の相性は最悪。その歪みから生まれたのが現在の【盤星教――星の子の家】。
だから、園田たち【盤星教】に所属している者たちは非術師に徹しているようだ。様々な越権を許されている術師も、原則 非術師には手を出せない。
「だが、時が来てしまった! 教典に示された禁忌(タブー)‼︎」
絶対的 一神教へと成り果てた【盤星教】。その対象である天元とケガレとも言える【星漿体】の同化。
教徒の手前、同化を見過ごせば会が立ち行かなくなる。だが、行動が過ぎれば術師に潰されてしまう。
「もうヤケクソだったのだよ、我々は。それがどうだ? 失うはずだった全てが、今や手中にある。財布の紐も緩むというもの」
園田は理子の遺体を布で包み、抱え上げて奥へと足を向けた。