第39章 覚醒するモジュレーション【壊玉】
「五条はいなかったぞ」
「え……?」
家入の言葉に、星也と夏油は目を丸くする。
彼女の話では、戦闘音に蠅頭の出現と消失――何が起こっているのか事態を把握しようと、高専に待機していた術師が敷地内を回った。
そこで五条のものと思われる大量の血痕と戦闘の形跡、残穢も発見されたが、彼の姿はなかったらしい。
「……まさか、悟も理子ちゃんと一緒に攫われたのか?」
「そんなことをするが必要がありますか? あの男の目的は【星漿体】である理子さまの殺害で、五条さんや僕たち術師は障害でしかないはずです」
考えられるとするなら、星良と同様にトドメを刺し損ねたか。
しかし、あの男は五条を警戒し、入念に作戦を立てていた。自分たちならともかく、五条のことは確実に仕留めに来ていたことだろう。
「夏油さん、どこへ?」
ふらりと立ち上がる夏油に声をかける。
「悟を探しに行くよ。もし生きているなら、あの男を追っているはずだ」
「まだ病み上がりでしょ。大丈夫?」
揶揄うように聞く家入に、夏油は「問題ない」と青い顔をしながらも頷いた。
「都内にはいくつも【盤星教】の施設がある。全て回るつもりか?」
夜蛾の言う通り、一つ一つ回っていたらキリがないだろう。そのうえ、夏油は万全の状態ではないし、焦りで普段のように冷静な判断ができるかも怪しい。
「夏油さん、五条さんの居場所を占います。そうしたら、何ヵ所も回る必要はありません」
指先を噛み切って陣を描き、懐から取り出した札に【五条 悟】と名前を書きつける。