• テキストサイズ

夢幻泡影【呪術廻戦/伏黒 恵オチ】

第5章 アレグレットに加速する心【自分のために】


 自分と同じ小学一年生。
 同じ学校の、隣のクラスの少女。
 可愛いとクラスでも評判で名前だけは知っていたが、興味がなくて顔は知らなかった。


 特級被呪者で、双子の姉に取り憑かれているのだと五条が教えてくれた。
 可哀想な奴ってことか、とどこか他人事のように考える。


 そして、神ノ原 詞織と対面して――……唐突に、伏黒の世界が鮮やかに色づいた。


 幼心に、こんなカワイイ子が存在することに驚いた。

 晴れ間が覗く空の下で、夜の帳を下ろしたような大きな黒い瞳、手足は細くて、肌は白い。どこか人形のような儚さを持つ少女。

 五条先生、と舌足らずな澄んだ声音に、心臓がギュッと握りつぶされた。

 初めての感情に、伏黒の頭はぐるぐるととりとめなく回る。


「今日から詞織と一緒に、呪術師として頑張る子だ。伏黒 恵くんだよ」

「恵……?」


 コテンッと首を傾げる詞織に、伏黒は言葉を呑んだ。
 女っぽい名前だと思っているのだろうか。
 内心でガッカリと肩を落とす伏黒に、少女は「じゃあ」と続けた。



「それなら……あなたはメグね」



 花が綻ぶような笑顔。
 本当に、その表現がピッタリと当てはまるような、可憐な笑みだった。


 伏黒の中で時間が止まる。
 呼吸の仕方さえ忘れてしまったように、息ができなくなった。


 真っ赤になった顔を見られたくなくて、伏黒は顔を伏せる。

 バクバク、バクバク。

 自分はこのまま死んでしまうのではないかと。
 そんなことを思うくらい、伏黒の心臓は高鳴っていた。
/ 381ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp