第38章 襲いくる黒きヴィオレント【壊玉】
「オレの間合いに入るか――終わりだな」
「オマエがな」
間合いに入る危険は承知の上。だが、近づくことでできることもある。
ズズ…と格納型呪霊がこちらに引き寄せられる。
【呪霊操術】――降伏した呪霊を取り込み、自在に操る術式。等級換算で二級以上の差があれば、降伏を省き、ほぼ無条件で取り込める。
格納型呪霊の能力は特殊だが、等級はせいぜい三級程度で、自分は一級。問題なく取り込める。
武器庫は押さえた。後は物量で押し切る――……バチッと手が弾かれた。
驚きに目を見開く夏油の前で、『ゲロ』と呪霊が新たに刀を吐き出す。
短刀を頭上に投げ、男は手に取った刀を振い、目にも止まらぬ速さで夏油と口裂女を十字に斬りつけた。
祓われた口裂女も確認できないまま、畳み掛けるように夏油の顔面に蹴りが入り――……夏油の意識はそこで途絶えた。
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