第38章 襲いくる黒きヴィオレント【壊玉】
「でも……やっぱり……なかったことになんてしたくない! 私、黒井に『ずっと』って言った! 『これからもずっと大好き』だって! 星良にも言った! 星也にだって、本当はちゃんと伝えたかった! この言葉を嘘になんてしたくないっ!」
ギュッと胸元を握りながら、理子が肩を震わせ、嗚咽をもらす。
「もっと皆と……一緒にいたい……! もっと皆と色んなところに行って、色んなものを見て……もっと……もっと! そして いつか……私を一番 好きだって言ってくれる人と、恋だってしてみたい……!」
星也が贈った珊瑚のブレスレットをつけた腕を抱きしめ、理子は続けた。
沖縄で見た理子の笑顔を思い出した。たくさん笑って、たくさん怒って、たくさんはしゃいで……星也の行動や言動にドキドキしたり、五条の思いつきにワクワクしたり……。
ここを出れば、いくらでも経験できる。
「帰ろう、理子ちゃん」
「……うん!」
伸ばした手を理子が取る――そのとき……。
――パンッ!
バチッと理子を守る結界が発動する。星良が渡していたという護符だ。
誰だ……と銃弾が飛んできた方向を見たときには、立て続けにパンパンパンッと銃声が鳴っていた。
動揺は焦りを生み、焦りは動きを鈍らせ、正常な判断を下せなくなる。
――パンッ‼
何度目かの銃声の後に、プツ…ッと珊瑚のブレスレットのビーズが弾けた。さらに放たれた凶弾が理子の額を貫く。
パラパラと音を立てて転がるビーズの音が、やけに響いて聞こえた。
理子の小さな身体が傾ぎ、トサ…と石畳に倒れる。