第38章 襲いくる黒きヴィオレント【壊玉】
「……【薬師世尊に帰命し奉る。瑠璃光の王、真実に至りて示す者、敬意を払われし者、宇宙の遍く全ての現象を知る者よ。四百四病をも癒す妙なる医薬、霊薬、偉大なる秘薬を此処に顕現し給え】……‼︎」
この呪力の流れ……そうか、これが【反転術式】による治癒。
自分に流れる呪力をなぞるように、星良は己の術式を通し、自分の身体に呪力を巡らせる。
冷めていた身体が熱を取り戻していくのが自分でも分かった。
「……星也……?」
肩で浅く息を繰り返す。ゆっくり瞼を持ち上げると、朦朧とする意識の中で、涙に目を赤く腫らした弟に抱きしめられた。
「……よかった、間に合って……星良ちゃんが死んだら、僕は……」
「くろ、い……さん……は……?」
星也の夜色の瞳が倒れた黒井を見て、悲しそうに瞼を伏せる。
「…………そ、か……あたし……なんにも、守れ……な……」
あたしが弱かったせいで……。
そこでとうとう、星良の意識は途絶えた。
* * *