第38章 襲いくる黒きヴィオレント【壊玉】
このまま あたしが死んだら……誰が星也を支えるの⁉︎
誰があの子を導いてくれるの⁉︎
いつか、あたしじゃない誰かが星也に寄り添ってくれるかもしれない。
星也が一番に頼りたいと思う人があたしじゃない日だって必ず来る。
でも今は、あの子にはあたししかいない……!
身体は凍えそうなほどに冷たくなっていくのに、貫かれた傷口と頭は燃えそうなほどに熱かった。
身体中に書いた【守護】は、全て男に破られた。今 身体に残っている文字は一つ。
――【修復】
一度も使ったことはないし、成功したこともない。
けれど、今 使わずしていつ使うというのだ。
あたしは星也と違って凡人で、大したことはできない。
この程度の術師なんて、この世界には吐いて捨てるほどいる。
それでもあたしは、御三家に次ぐ名家――神ノ原一門の娘!
できるはずでしょ! 星也の姉なんだから‼︎
身体に書いた文字に呪力を流す。
失血で飛びそうになる意識をギリギリで繋ぎ止めた。
正の呪力を生み出し、自分に【反転術式】をかける。
【反転術式】を使うのは初めて。けれど、家にあった指南書で理屈は分かっている。
呪力をプラスに変換する修練は積んできた。
星良にとって相手を攻撃したり拘束したりする呪符は順転の術式だが、守るための護符は反転の術式だ。勝手は違うが、【反転術式】はその応用。
ダメ……! できない……‼︎
ムリなの? 凡人のあたしが【反転術式】なんて……!