第37章 ブリランテに照りつける太陽【壊玉】
「星良ちゃんはなんて? こっちに来られそうかい?」
夏油に呼ばれて、星也は深いため息を吐いた。
「七海さんたちと空港で頑張るそうです」
「そっか。振られちゃったんだ?」
笑う夏油を不愉快に感じながら、星也は携帯を仕舞う。
「もう少しつき合ってやってくれ。きっと、これが理子ちゃんにとって最後の思い出だ」
「分かっています」
三ヶ月、理子を守ってきた。理子のことを考えて行動してきた。彼女が無事に同化を迎えられるための護衛だ。
彼女の同化は世界のため。
どんなに耳障りのいい言葉に置き換えたところで、結果は理子の死。
彼女を助けられるのなら助けたい。
けれど、そんな方法はどこにもなかった。
だから、せめて彼女が“最期”の瞬間まで心穏やかに過ごせればいい。そのためなら何だって叶えてやろう――そう思っていた。
けれど、昨日 会ったばかりの五条の方が、ずっと理子のことを考えて行動できている。
術式を常時 発動しっぱなしにしているにも関わらず、滞在時間を延ばし、ギリギリまで楽しい思い出を作ろうとしている。
「夏油さんは、もし理子さまが同化を拒んだらどうするんですか?」
「もちろん、助けるよ」
「それが……世界に対する反逆でも?」
「問題ない。私と悟は最強だからね」
夏油が即答する。成し遂げるだけの自信と力を持っている。
――「『同化がイヤだ』って言う【星漿体】が大好きな姉貴だったとしても、助けたら反逆だからって泣きながら説得すんのか、シスコン」
違う。
もし【星漿体】が星良だったなら、なりふり構わず、悩むこともなく、自分は世界の反逆者になる。
そこに躊躇いはない。