第37章 ブリランテに照りつける太陽【壊玉】
『分かったわ。もう一日、空港を見張ってればいいのね』
「いや……姉さんはそろそろこっちに……」
『……それにしても、少し気になることがあるのよね』
「気になること?」
言いたいことはたくさんあるが、先に姉の話を促した。
『あたしたちが見つけたのは、呪詛師三人と【盤星教】の信者二人。でも、呪詛師は懸賞金とは関係ない人たちだったし、【盤星教】の人たちもそう。純粋な天元さまの信者。『理子さまを狙う人』で捜索したけど引っ掛からなかったのよね』
「そう……」
つまり、理子の件に関わっていたのは、黒井を拉致した者たちだけ。懸賞金をかけた側も、理子が沖縄に来ていることは知らないのか。
「ま、呪詛師は減ってるわけだから、無駄じゃないけど……高専の人たちにもどんどん捕まえてくれって言われてるし。あ、さっき捕まえた呪詛師は新婚旅行だったみたいで、ちょっと申し訳なかったかも』
楽しそう……こっちはナマコをぶつけられ、海に沈められ、さんざんなのに。
星也が黙り込んでいると、携帯の向こう側で小さく笑う声が聞こえる。
『星也はお姉ちゃんがいなくて寂しいの?』
「……うん」
小さく頷くと、『そっか』とまた笑われた。
『でも、星也はあたしがいると、周りと関わろうとしないでしょ。あなたはこれからもっともっと強くなれる。色んな人との関わりが、あなたを強くしてくれる。それに……あなたは苦手かもしれないけど、五条さんなら“あの子たち”を助けられる。そうでしょ?』
「……分かってるよ」
――コロシテヤル!
まだ、鮮明に脳裏に焼きついている。
まるで、夜の泉に一滴の血を垂らすように濁っていく紅い瞳。
悲鳴のような憎悪の叫び。
飛び散る鮮血、脈打つ小さな心臓の生々しさ。
目の前で片割れを失い、慟哭する少女の声も。
「分かってる」
もう一度 頷き、星也は通話を切ると、「星也君」と夏油に呼ばれた。