第37章 ブリランテに照りつける太陽【壊玉】
「まぁまぁ。飛行(フライト)中に天内の賞金期限が切れた方がいいっしょ」
「それは……確かに。ですが……」
「悟」
周りに気遣ってか、夏油は少し声のトーンを落とした。
「昨日から術式を解いていないな? 睡眠もだ。今晩も寝るつもりないだろ? 本当に高専に戻らなくて大丈夫か?」
そう。五条は沖縄に着く以前――おそらく、昨日 呪詛師と戦った後から、継続して術式を発動状態にしている。
だから、ナマコを投げつけられた腹いせに【天后】に襲わせたときも、タイムラグなしで防がれた。
昨日のホテルでは交代で見張っていたはずだが、夏油の様子を見る限り、その間もずっと起きていたのだろう。
「せめて、一度 術式を解いて休んだ方がいいですよ。その間は僕の【天空】と夏油さんの呪霊に見張らせます。それに、理子さまには姉さんが護身用として護符を持たせていますから安心して下さい」
「いいって、問題ねぇよ。桃鉄 九十九年やったときの方がしんどかったわ」
それに、と五条は夏油の胸に拳を当てた。
「オマエもいる」
仕方ないな、と夏油は息を吐くが、信頼されていることに満更でもなさそうだった。
「星也もそこそこやれるしな」
「悪かったですね。そこそこで」
乱暴に頭をかき混ぜてくる五条を振り払いながら睨む。
「ぃよーしっ!」と五条が走り、海で遊ぶ理子に合流した。テンション高く振る舞っているが、その裏に蓄積する疲労は計り知れない。
「滞在時間が伸びたと姉さんに連絡してきます」
「ふふ。星良ちゃんの声も聞きたいから?」
夏油に揶揄うように言われ、星也はムッとしながらもその場を離れ、星良の携帯へ電話をかける。
三コールも待たせず、『もしもし?』と姉の声が聞こえ、星也は無意識に肩の力を抜いた。
「姉さん、実は……」
黒井を助けてから今までの経緯をざっくりと説明する間、星良は「うんうん」と時折り相槌を打つ。