第4章 決意へのマーチ【秘匿死刑】
「ハハッ。楽しい地獄になりそうだ。今日中に荷物をまとめておいで」
「……? どっか行くの?」
「「東京」」
笑う五条に尋ねると、背後に人の気配を感じて振り返る。
「伏黒! 詞織!」
「なんでいきなり名前呼び捨てなんだよ」
「別にいいけど」
不機嫌そうに伏黒が眉を寄せるが、当の詞織は平然とした表情をしていた。
額に包帯、頬にガーゼをしているが……。
「元気そうじゃん!」
傷が酷くて心配していたのだ。
よかった、よかった。
「包帯(コレ)を見てそう思うか?」
「運動神経はいいけど、視力は最悪ね」
グッと親指を立てて満面の笑みを浮かべると、能面のような表情が返ってくる。
「詞織! よかった、無事で……こんなにケガして……五条先生に写メを貰ったから心配してたのよ!」
「姉さま」
詞織に駆け寄った星良が、ガーゼで手当てされた頬に触れた。
「痛む?」
「もう痛くない。兄さまは元気?」
「もちろん、星也も元気よ」
そう言いつつ、星良が痛ましげに眉を下げる。
「すみません、星良さん。俺が庇いきれなくて……」
「気にしないで、恵。こういう仕事だもん。大丈夫、後で二人とも治してあげるから」
そんな会話を繰り広げる三人に、「あれ?」と首を傾げた。
「ねぇ、あの三人って……」
「あぁ、幼なじみだね。家族ぐるみで」
家族ぐるみ。なるほど。
そういえば、小学生の頃からのつき合いだと言っていたな。