第4章 決意へのマーチ【秘匿死刑】
「え? ホントに大丈夫なわけ?」
「だから、言ったじゃん。確定だよ。肉体の耐性だけじゃない。宿儺相手に難なく自我を保てる。千年生まれて来なかった逸材だ」
「うわー……ビックリ」
どこか引き気味に言いながら、星良はベルトから小さな巻物を取り出し、【容器】【水】と書き込んだ。巻物から現れたコップには、たっぷりと水が入っている。
「飲んだら? 胃とか口の中とか気持ち悪いでしょ、さすがに」
「あ、どーも」
すごい能力――いや、術というのか。書き込んだ文字を具現化することができるらしい。便利だな。
水を飲み干すと、コップはシュゥ…と溶けて消える。
「覚悟はできたってことでいいのかな?」
「全然」
ベンチから立ち上がり、座ったままの五条を振り返った。
覚悟なんて、きっと全然できていない。
戦うことの意味も、守ることの意味も、まだ追いついて来ない。
「でも、呪いは放っておけねぇ」
本当に面倒くさい遺言をもらったものだ。
祖父の遺言が――この心を覚悟と結びつけようとしている。
だが、その遺言を……人を救う正しさを、曲げたくはない。
「宿儺は全部喰ってやる。後のことは知らん」
自分の生き様を後悔したくない――そして、自分の死に様は決まっている。
――「オマエは大勢に囲まれて死ね」
刻み込むようにして、耳の奥で反芻する。
祖父の言葉――遺言。温もり、過ごした日々。
グッと拳を握り込む虎杖の肩を、星良が優しくポンポンッと叩く。
「君みたいな子、キライじゃないけど……あんまり肩に力入れてちゃダメだよ」
ウチの弟がそれで失敗するタイプだから、と苦笑いして続けた。