第37章 ブリランテに照りつける太陽【壊玉】
「そうでしたか。では、あとはこちらで……」
「いえ。私たちで解決できますので、彼はこのまま。警察の手配もしましたので、問題ありません」
「ですが……」
空港内のトラブルは自分たちの管轄だと主張したいのだろう。当然だ。
それに、七海たちはどう見ても学生。大人ならまだしも、子どもが何を言っても聞いてはくれなさそうだ。
星良は七海の陰に隠れ、巻物を広げた。
「――【承服】」
星良の呪術に、警備員が突然 にこやかな笑みを浮かべる。
「分かりました。それでは、よろしくお願いします」
ご協力感謝します、と頭を下げ、二人の警備員は去って行った。
「よかった」
「ありがとうございます、星良さん」
「いえ」
相手の心理や行動を操ることも可能だが、あまり気分のいいものではない。
星良は、自分の立場を理解している。
自分は呪術師として凡庸で、星也のような卓越した才能はない。
弟に対する劣等感――それはもう克服した。
自分にできることは弟もできるが、彼はいつも役割を譲ってくれる。それを笑顔で受ければ、星也は嬉しそうにしてくれた。
別にいいじゃない。
自分にできることは精一杯やる。それだけ。
できないことは努力する。努力してどうにかなることは頑張る。
それでもできないことは――……頑張ったって仕方がない。
誰にだってできないことはある。それは自分も、星也も同じ。
サラリーマン風の呪詛師を高専関係者に引き渡し、空港内の巡回を続ける。