第37章 ブリランテに照りつける太陽【壊玉】
「夏油さんが高専関係者を近場に待機させているはずです。【星漿体】の件と関わりがあるかは別にして、呪詛師を野放しにはできませんし」
三人はサラリーマン風の男を追いかけた。そして、七海が彼の肩を叩く。
「すみません。これ、落としましたよ」
「……え?」
自分のハンカチを差し出して七海が反応を窺う。サラリーマン風の男は首を傾げ……息を呑んだ。
七海の高専の制服――その特徴的な渦巻きのボタンで、彼が何者か察したのだろう。
「そ、それは……自分のハンカチでは……」
「お聞きしたいのですが、あなたは呪詛師ですか?」
先の動揺でほぼ呪詛師に違いない確信を抱いた七海が問う。冷や汗を流し始める様子から、三流の気配しか感じられない。
「ちっ」
小さく舌打ちをして男が体勢を低くする。懐に手を入れるのを見て、星良は巻物に素早く文字を書きつけた。
「――【停止】」
男はビキッと動きを止る。次いで、灰原がポケットから取り出したモノを投げる。
「【折神操術――猛犬】‼︎」
灰原の投げた犬の折紙――否、折神が男を踏みつけた。非術師には見えないから、たぶんセーフだろう。その間に、七海が電話をかける。
「呪術高専の七海です。呪詛師を確保しました。引き渡しをしたいので来ていただけますか。場所は――……」
「何かありましたか⁉︎」
空港の警備員が二人、慌てて声をかけてきた。呪詛師だなんだと話すことはできない。
「えっと……その……これは……」
「肩がぶつかって怪我をしたと因縁をつけられてしまって……暴力を振るわれそうだったので拘束しました」
しどろもどろな灰原に、電話を終えた七海が冷静に答える。カッコいい。
サラリーマン風の呪詛師は「違……っ!」とバタバタ暴れるため、ややこしくなる前に「【入眠】」と書きつけて眠らせた。