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夢幻泡影【呪術廻戦/伏黒 恵オチ】

第4章 決意へのマーチ【秘匿死刑】


 細かいことは分からない。
 死ぬときの自分のことなんて、もっと分からない。

 それでも――……「宿儺を喰う」ということは、自分にしかできないはずだ。
 それで救われる人が大勢いる。

 死ぬのはイヤだ。死刑なんて冗談じゃない。
 逃げられるものなら、逃げたいに決まっている。

 だが――……もし、死刑から逃げたら……使命から逃げたら、いったい自分はどう過ごすのだろうか。

 食事をして、風呂に入って、漫画を読んで……ふと気持ちが途切れたとき、「あぁ、今 宿儺のせいで人が死んでいるかもしれないなぁ」とへこんで。

 自分には関係ない。自分のせいではない。
 そうやって言い聞かせるのか?
 言い聞かせて、無理やり自分を納得させながら生きていくのか?

 そんなのはイヤだ。
 死刑になるのと同じくらい――いや、死刑になるよりもっとイヤだ。


 ――生き様で後悔はしたくない。


「あの指、まだある?」

「ん」

 五条に差し出された特級呪物――両面宿儺の指を受け取り、マジマジと眺める。

「改めてみると気色悪いなぁ」

 いくら窮地であの方法しかなかったとはいえ、よく呑み込んだものだ。
 改めて自分で自分に驚きと感心を抱いて、虎杖は一息に指を口の中に放り込んだ。

 ゴクリと嚥下すると、身体の内側が燃えるように熱くなる。
 頭の芯は大炎上して、爪先まで火をつけられたように熱を持った。耳の奥で知らない誰かが高笑いする声が響く。


『クッ、ククッ……』


 宿儺が表層に出てきそうだったが、すぐに現実へ自分の意識を繋いだ。同時に嗚咽が込み上げてくる。

「……まっず! 笑えてくるわ」

 胃の中が逆流しそうになるのを堪えるが、宿儺を押さえるより難しかった。
 そんな虎杖に星良が目を丸くして言葉を失い、五条は満足げに口角を上げる。
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