第37章 ブリランテに照りつける太陽【壊玉】
「勝手に話を進めるな! 取り引きには妾も行くぞ! まだオマエらは信用できん!」
理子の言葉に、五条があからさまに大きなため息を吐く。
「理子ちゃん、私たちのことは信用できなくても、星也君や星良ちゃんのことは信用しているよね? 二人も来てくれる。それでどうかな?」
優しい声音で諭すように夏油は言うが、彼女はふるふると左右に首を振った。
「このガキ、この期に及んでまだ――……」
「助けられたとしても!」
五条を遮り、理子は声を震わせる。
「助けられたとしても……同化までに黒井が帰って来なかったら? まだ、お別れも言ってないのに……⁉︎」
目尻に涙を溜め、理子はスカートの裾をギュッと握りしめていた。嗚咽を堪えるように唇を引き結ぶ姿を見て、星也は彼女の手に触れる。
「分かりました。連れて行きましょう」
「星也、オマエ……!」
「五条さんたちも同意見でしょ。どちらにしても、『連れて行ってほしい』と言われている以上、僕たちに拒否権はありません」
理子の要望は全て叶えろ。それが天元からの命令だ。
「そうだった。ま、どうとでもなるでしょ。五条さんと夏油さんは、“最強”なんですから」
悪戯っぽく片目を瞑ってみせる星良に、五条は「言うじゃねぇか」と得意げに笑った。
「……そのうち、拉致犯から連絡が来る。もし、アッチの頭が予想より回って、天内を連れて行くことで黒井さんの生存率が下がるようなら、やっぱオマエは置いて行く」
いいな、と念を押す五条に、理子は「分かった」と目尻に溜まった涙を拭う。
「逆に言えば、途中でビビって帰りたくなってもシカトするからな。覚悟しとけ」
脅し文句と長身からの凄みにも怯むことなく、理子は五条を睨むように見上げた。
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