第37章 ブリランテに照りつける太陽【壊玉】
「すまない、私のミスだ」
頭を下げる夏油の隣に星良の姿を見つけ、星也は安堵の息を吐いた。
「夏油さんだけのせいじゃない。あたしも、何も気づけなかったもの」
そう言って、星良も理子に頭を下げる。
「侵入した呪詛師は三人。これは間違いありません。ですが、学校を出たときに【天空】を戻してしまいました。すみません」
【天空】に学校を見張らせ続ければ、懸賞金につられてやって来た呪詛師か【盤星教】の非術師かは分からないが、気づけたはずだ。
「敵側にとっての黒井さんの価値を見誤っていた」
「うるせぇな、お前ら。謝罪合戦やってても何も進まねぇだろうが。だいたい、ミスってほどのミスでもねぇだろ」
呆れた様子で星也たちを見る。五条はポケットに手を入れ、驚くほど真面目な表情をしていた。
「相手は次、人質交換的な出方で来んだろ。天内と黒井さんのトレードとか、天内を殺さないと黒井さんを殺すとか。でも、交渉の主導権は天内のいるコッチ。取引の場さえ設けられれば、あとは俺たちでどうにでもなる」
グッと星也は拳を握り締めるが、どうにか無理やり自分を宥める。
五条の言う通り、理子を交渉の場に引き出し、交換なり殺すなりできない限り、敵側もまた交渉材料である黒井を殺すことはできない。
交渉の場に黒井が出てくれば勝ちは確定。理子を渡さず、黒井を救出するために動くことが可能だ。
「天内はこのまま高専に連れて行く。星也、お前の【陰陽術式】なら、天内の代わりを作れんだろ」
「……なるほど、人形(ヒトガタ)に影武者をやらせようってことですね。理子さまが髪や爪などの身体の一部を提供してくだされば可能です。でも、それなら僕より姉さんが適任ですよ。人形(ヒトガタ)なら僕より上手いし、呪力も似せられる」
ほぅ、と五条と夏油が目を丸くした。
呪術師としての等級や実力は確かに自分の方が上だが、こと呪力操作などの細かな作業は姉に軍配が上がる。
だが、理子が「ま、待て!」と五条の腕を引いた。