第36章 リゾルートに揺るがぬ決意【壊玉】
「同じ手をそう何度も食らわないわよ!」
女が独鈷に口づけ、炎へ掲げた。光の結界が女を守る。
グッと押し返された炎がまた弾けた。その弾けた炎の後ろから、星也が接近する。
「え……」
女が目を見開く。鼻先が触れそうなほどの距離。夜色の瞳に映る自分すら視認できてしまう。
微かに頬を赤く染めた女の唇が触れそうなったところで――星也は女の首筋に強く歯を立てた。
「きゃぁあ……っ⁉︎」
星也の姿が小さな羽を持つ真紅の大蛇へと変わる。
術で自分の姿を被せ、炎の中に忍ばせていたのだ。近くに行けば自分に気を取られるだろうことは想像できた。
「女の純情を弄んで……!」
「純情? 術師同士の戦いにそんなもの関係ないでしょ」
でも、と髪や服を黒く焦がして倒れ伏す女の元で膝を折り、怒りに滲む顔を覗き込む。
「僕は可愛いから、何でも許してくれるんですよね?」
「は、はい……♡」
「じゃあ、懸賞金の話、詳しく聞かせてもらえます?」
「何でも話します♡」
眉を下げて媚びるようにうっとりとする女にため息を吐き、星也は少し離れた場所で戦う五条の方へ視線をやった。
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