第4章 決意へのマーチ【秘匿死刑】
「で、どうするかは決まった?」
「……こういうさ、呪いの被害って、結構あんの?」
「今回はかなり特殊なケースだけど、被害の規模だけで言ったらザラにあるな」
「呪いに遭遇して普通に死ねたら御の字。ぐちゃぐちゃにされても死体が見つかればまだマシよ。あたしの父さんは呪霊と相討ちで死んじゃったけど、遺体どころか骨すら残らなかった」
星良の話す呪術師の現状に、五条が固い声音で続ける。
「宿儺の捜索をするとなれば、凄惨な現場を見ることもあるだろうし、君がそうならないとは言ってあげられない。ま、好きな地獄を選んでよ」
呪術師として地獄に飛び込むか、処刑される地獄を選ぶか。
ボロボロになっても立ち上がる伏黒の姿が脳裏を過った。
震える身体を引きずるようにして戦う詞織の姿が脳裏を過った。
自分のせいだと泣きじゃくる佐々木、包帯やガーゼで手当てされてベッドに横たわる井口。
昨夜 知ったばかりの、呪いが存在する世界の裏側。
「宿儺が全部 消えれば、呪いに殺される人も少しは減るかな?」
虎杖の言葉に、星良が目を瞠る気配を感じた。
その反対側で、五条が「もちろん」と深い笑みを浮かべる。
――「オマエは強いから人を助けろ」
――「手の届く範囲でいい。救える奴は救っとけ。迷っても、感謝されなくても、とにかく助けてやれ」
死に際の祖父の言葉だ。
まだ、耳の奥に残っている。
頑固で、偏屈で、短気で、すぐに怒鳴る祖父が好きだった。
本当は寂しがり屋のくせに、憎まれ口で隠す不器用な祖父が好きだった。