第36章 リゾルートに揺るがぬ決意【壊玉】
「ったく、呪術師は年中 人手不足だってのに。転職するなら歓迎するよ」
「いやぁ、職安も楽じゃねぇだろ。そのガキ 譲ってくれればそれでいい」
「アタシも。あぁ、でもでも♡ そっちの坊やが『呪詛師を辞めて、お姉さん♡』って可愛くお願いしてくれるなら~、考えてもいいかも♡」
「おい、星也。言ってやれ。敵が一人減るぞ」
「絶対イヤだ」
きっぱり言い放つと、呪詛師の女はうっとりとした顔で「振られちゃった♡」と笑んだ。気持ち悪い。
「ま、いいや。星也、結界 張れるか?」
五条がクイッと理子を示す。彼女を巻き込まないように、か。五条なら守りながらでも戦えるだろうが、万全を期した方がいいだろう。
「【謹請現示――太裳】」
翡翠色の巨大な文鳥が理子を包み込む。その柔らかな翼に、理子はホッとした様子で身体を預けた。
【太裳】にはこの三ヶ月、何度も理子を守らせており、彼女も信頼してくれている。
「【太裳】、理子さまを守れ」
キィンと身体を揺らして一つ鳴く【太裳】に理子を任せ、星也は二人の呪詛師に向き直った。
「ふふ。仕方のない坊や♡ いいわ、少しだけ遊んであげる♡」
ピシィンッと女の取り出した鞭がしなる。紙袋の男はジリジリと五条の様子を窺っているようだ。
「おいで、アタシの胸に♡」
星也は返事をすることなく【白虎】に風を起こさせ、迫る鞭を防ぐ――が、鞭は風を突き抜け、星也の頬に裂傷を刻んだ。
そう簡単にはいかないか。
「【白虎】、行け」
屋根の上に降り、短く命じる。
「あら、怖い♡」
チュッ♡ と鞭に口づけ、女が鞭をしならせ、【白虎】を貫いた。
「【白虎】!」
ビュゥッと音を立てて白虎の輪郭がほどけ、消える。
十二天将は破壊されても死なない。何度でも復活することができる。【白虎】には申し訳ないが、問題ない。